出版記念インタビュー:安田経営診断事務所様

McSSのリーディングユーザーである中小企業診断士の安田順様に、新著『中小企業の「銀行交渉と資金繰り」完全マニュアル』のご出版記念インタビューを行いました。

新著『中小企業の「銀行交渉と資金繰り」完全マニュアル』



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中小企業の3大課題「1融資、2返済、3経営」、すべてがうまく回り出すポイントがわかる!

「中小企業の外部CFO」の顔を持つ中小企業診断士と、元銀行支店長の経歴を持つ弁護士――。中小企業の内部事情をとことん知り尽くした2人が、経営者に求められる1銀行交渉スキルの向上(融資)、2お金の流れの管理(返済)、3経営上の問題点の把握(経営)について徹底解説。


プロフィール

安田 順 様プロフィール
中小企業診断士。経営革新等支援機関。経営学修士(法政大学大学院経営学研究科)。

1966年島根県松江市生まれ。住宅金融専門会社~㈱住宅金融債権管理機構(現在の整理回収機構)で、融資業務のほか残高100億円超の大口案件の債権回収、企業再生を担当。その後、経営コンサルタント会社、メガバンク系列のリース会社を経て、2001年に独立。

現在、金融・財務に詳しい「中小企業の外部CFO(財務責任者)」として、実質無借金の会社から再建まっただ中の会社まで、幅広く経営のサポートに携わっている。ドンブリ経営の中小企業をキャッシュフロー経営に変えるのが得意で、会社の真の実力を引き出すため、マーケティングのアドバイス、社員教育、銀行交渉の支援などに日々奔走中。

主な著書に『中小企業のための「資金繰り・借入交渉」実践マニュアル』(日本実業出版社)、『銀行が貸したい会社に変わる 社長のための「中小企業の決算書」財務分析のポイント』などがある。

■2023年11月インタビュー実施

中小企業の経営環境は、従来とは異なるステージに入りつつある

CRD:今回新著を発刊されるに至った経緯や思いを、まずお聞かせいただけますでしょうか。


安田様:以前、日本実業出版社の「企業実務」という雑誌で、かなり長い間、連載記事(※)を執筆していました。その頃から経理担当者向けに実務的な内容を書いており、10年くらい前、今回の著作の基になる『中小企業のための「資金繰り・借入交渉」実践マニュアル」を出版しました。当初はその本のリニューアルを予定していましたが、書き進めるうちに、新しいアイデアやトピックが生まれ、結果として全面的な改訂に至りました。
※月刊「企業実務」『いま経理担当者が直面する課題・悩みを一刀両断! 』



CRD:10年前ですと、リーマンショックなどが終わった後に、銀行交渉や資金繰りで中小企業の方がお困りであろうという思いで執筆されたわけですね。


安田様:はい。前作は「金融円滑化法終了」の影響を踏まえて執筆しました。実際には、その後の金融緩和や銀行の融資競争激化で、想像していたより資金調達しやすい状況が生まれました。



CRD:円滑化法が終わって資金繰りが厳しくなると言われた一方で、金融庁の方針が事業性評価の方向に転換していったのが、中小企業にとってはよかったと思うのですが、このタイミングで新著を出されたきっかけは、ゼロゼロ融資の返済でしょうか。


安田様:そうです。ゼロゼロ融資の返済が始まり、それを返せない会社は、キャッシュフローを先読みして銀行に融資を交渉していく必要があります。ただし、現在の情勢は、銀行返済のコントロールだけで乗り切ることはできません。たとえば、収益力や生産性を高められない中小企業は、賃上げに対応できず、淘汰されていくでしょう。このように中小企業の経営環境が、従来とは異なるステージに入りつつあることを念頭において、執筆しました。



CRD:安田先生が中小企業の方とお話される中で、お悩みとして銀行交渉や資金繰りに関することが多いから今般の新著のタイトルなのかなと思ったのですが、そのあたりはいかがでしょうか。


安田様:新著のタイトル『中小企業の「銀行交渉と資金繰り」完全マニュアル』は、私の業務そのものです。最近は、銀行交渉や資金繰りを懸念する2代目、3代目社長からの相談が増えています。そういう会社の多くは、財務内容が悪く、McSSのCRDランクがC~Dになっています。私は経営者、経営幹部とともにB以上にランクアップする経営計画を銀行に提出し、「会社の強み」や「成長の方向性」を伝えるようにしています。なお、計画策定に合わせて「社員教育」も行います。売上目標の達成や粗利の改善を目指す場合は、社員を巻き込むことが絶対に必要になるからです。



CRD:経営者の方がこれを読んで、うまく実践していければもちろん素晴らしいのですが、おそらく中小企業の経営者の方ですと、全てを理解して実践することは難しいだろうなとも思います。むしろ、経営者のブレイン的な方にこういった知識やノウハウを共有して、経営者をリードしていただけたらいいですよね。


安田様:その通りです。この本を参考にして欲しいのは経営者だけではなく、経理財務担当者や税理士、会計事務所の担当者、経営コンサルタントなどです。



CRD:中小企業の方は顧問税理士の方に銀行交渉などをサポートしてもらっているイメージがあるのですが、案外そうでもないということなのでしょうか。


安田様:顧問税理士は、銀行交渉や資金繰りの支援にまでは手が回らないことが多いようです。私の場合は、顧問税理士にお会いして役割を分担し、協力を得ながら銀行交渉の支援などを進めています。

資金繰り表の作成は必要不可欠。まずは数字を置いて感覚を磨くところから

CRD:中小零細企業の方々に、この本の中でもこういうところを特に実践するといいですよ、というものがメッセージとしてありましたらお聞かせいただけますか。


安田様:特に実践してほしいのは「資金繰り予定表を作成すること」です。最近は銀行の融資姿勢が緩んでいたため、資金繰り表を作っていない中小企業が増えている印象です。しかし、イザという場面で、銀行は必ず資金繰り表の提出を求めてきます。資金繰り表の作成では、社長自身が実際に手を動かして3ヵ月先くらいまでの資金繰りを予想してみることが重要と思います。本書では、資金繰り予想のファーストステップとして、経常収支をゼロと仮定し、半年後の現預金を予想してみることをお勧めしています。



CRD:安田先生が中小企業の社長向けに、そういった資金繰りのためのセミナーなどを開催されることもあるのでしょうか。


安田様:最近はどちらかというと「キャッシュフロー計算書」のセミナーが多いのですが、埼玉県産業振興公社で、決算書の読み方セミナーを毎年社長向けに開催しているので、その中で資金繰り表の話もしています。資金繰り予定表を作るのは大変で、作って当たり前と言われている割には、作っていない会社が多いです。



CRD:例えば融資案件に関連して銀行から中小企業に資金繰り予定表を要求されるような時は、顧問税理士の方が作るものなのでしょうか。


安田様:資金繰り予定表を作るのは、どちらかというと社長、経理担当者、経営コンサルタントではないでしょうか。小規模な会社で、顧問税理士が資金繰り表を作成しているケースは時々見かけますが。



CRD:税理士でも、資金繰り表作成についてノウハウがある方と、そういうことはできない方に分かれている感じなのでしょうか。


安田様:おそらく、そうでしょう。ただし、「資金繰り予定表の作成」は手間がかかるので、それだけの時間をとれるかが問題でしょう。話がそれますが、私の経験では、McSSに関心を持つ税理士と、全然関心を持たない税理士に分かれます。資金繰り表までフォローしてくれるのは、前者の税理士でしょう。

『潰れない会社を目指す』

CRD:著書の中で、100社の決算書について、McSSの偏差値との相関からこういう財務指標が有効ではないかと分析されている箇所がありましたが、非常に説得力がありました。弊社からこの指標がこうですということは、企業秘密なので申し上げられないのですが、かなり鋭い分析をされていらっしゃいました。


安田様:ありがとうございます。コロナ融資を受けている中小企業の中には、コロナ融資の「次の融資」が受けられるかどうかを心配している会社が少なくありません。そういう会社ではMcSSを利用し、Bランク以上にランクアップする方法を検討します。その際、本書の120ページに記載した「CRDランクと相関が強い財務指標」の動きをチェックすると、改善すべき点が見えてくると思います。



CRD:ありがとうございます。McSSの評価が上がるような経営を続けるということは、著書の言葉をお借りすると、『潰れない会社を目指す』ということですね。成長には色々な条件が必要ですが、潰れない会社は、会社組織も含めてどうコントロールしてくのかということだと思いますので、McSSの指標を上げるための取り組みを進めていければ、必然的に体質が強い会社になりますし、 その先の成長の土台にもなると思っています。
それはもちろん会社にとってもメリットのある話ですし、金融機関にしても、そういうところに貸出を進めるべきという判断に繋がっていく。仕組みとしてそうなるべきと著書の中で触れられていましたが、その重要性を感じています。


安田様:McSSが威力を発揮するのは、Cランク以下の会社でしょう。Cランク、Dランクを行き来しているような会社に、McSSで危機感を持たせることが極めて重要です。



CRD:ちなみに、先生がコンサルをされる際には、経営者に「この財務指標を改善するのがいいですよ」というようなアドバイスをされるわけではないですよね。「こういう財務指標が悪いから、それをこういうふうに改善していきましょう」というような、もう少し具体的なアクションについてアドバイスされる感じでしょうか。


安田様:経営者や経理担当者には、重要な財務指標を2~3絞り込んだうえで、伝えます。一方、社員に対しては、「目標を達成するのにいくらの利益が必要か」というように、主に金額を伝えるようにしています。予算管理では、実績数値以上に「行動計画の達成状況」が重要になります。予算管理がマンネリ化してきたら、SWOT分析や取引先のABC分析を行ったりして、活性化を促します。



CRD:著書ですと3章で、McSSのランクとか偏差値の話の後に、良いBS・悪いBSといったお話を、McSSのレポートも取り上げていただきながらしていて、大変ありがたいなと。決算書がこうなっているとまずいよ、こうなった方がいいよというのがすごくわかりやすかったです。


安田様:中小企業が目指すべきBSの姿は、これまで意外と曖昧だったと思います。「自己資本比率を30%に引き上げる」と言っても、自己資本比率は他の指標の数値にも影響します。例えば、現預金を減らして、負債を返済すれば、自己資本比率はあがりますが、資金繰りに余裕がなくなり、むしろ倒産しやすい状況が生じます。そこで、著書では「純資産」「借入金」「現預金」の構成比で、よいBS、悪いBSを定義しました。McSSの有料レポートを参考にしています。

財務改善に向けた道筋を深く、徹底的に掘り下げる

CRD:McSSのCランク、Dランクの方に改善内容を提案できるようになる、そのためのコツのようなものはありますでしょうか。


安田様:まず下位ランクに落ちた原因を把握することです。たとえば、売上や利益が下がった状況なら、総資本経常利益率(ROA)も悪化しているでしょう。ROAが悪化している場合は、その背後にある売上高経常利益率と総資本回転率がどう動いているかをそれぞれチェックし、「何かできることはないか」と改善策を検討します。
また、債務償還年数の問題や債務超過をいつまでに解消するかのゴールをはっきり打ち出して、そのための道筋を考えることが重要です。私の場合は、McSSの将来シミュレーション機能を使って、社長と議論しています。将来シミュレーション機能でも、CRDランクが表示されるので、助かっています。
5年10年単位の計画を作ったとしても、最後に数字がこうなりましたみたいな表面的なことで終わってしまいがちなので、そうではなく「5年以内に必ずこれを達成する」とゴールを打ち出して、その上で「今できることは何か」と。そういったところを今の時点で深く掘り下げていけるか、そういうスキルが大事なのだと思います。そのためには会社の中身がわかってないとダメですよね。



CRD:事業性の部分ですね。McSSはどうしても財務のツールということで、事業性評価となるとロカベンの定性評価を使われている方が結構多いのかなと思っているのですが、実際のところはいかがでしょうか。


安田様:自分の場合、事業性評価はもう普通に事業デューデリを教科書に沿って自分で作っていくという感じですね。



CRD:PLをいかに改善させるかということを、事業性を見て、アクションプランを立てて進めていって、PLが改善したその後にBSがだんだん改善していく、そういう流れですね。


安田様:この前の案件ですけど、Eランクだったのが、急にCランクに上がったんですよね。しばらくすると、Dランクに戻っていたのですが、Cランクに上がった理由が、経常利益の急増でした。バランスシートは相変わらず悪いけど、経常利益が伸びたということですね。指標的にはROAが高くなったとか、そういうことです。要するに、業績のいいときにはパッとランクが上がってしまう。でも中小企業の業績はすぐに悪くなるので、そのあたりの見極めが必要ですね。経営者にも「今回Cに上がったけど元々BSが悪いからすぐDに落ちますよ」とちゃんと伝えておく必要がある。PL要因の反映の仕方については、連続性を見る上ではちょっと混乱する時があるかなと思っています。



CRD:先生が書かれた、3章の「良いバランスシート、悪いバランスシート」の話に繋がるわけですね。


安田様:業績がよい時にPLが伸びてランクがばっと上がったものの、本当の実力だとDランク以下という会社もあるので、そこは注意して見るようにしていますね。



CRD:最後に、この書籍を通じて、読み手の方々へのメッセージをお願いします。


安田様:本の初めにも書いたのですが 、資金がなくなって追い詰められるということは非常に苦しいことなので、 それをとにかく回避しましょうと言いたいですね。追い詰められてから何かをしようとしても遅いので、先手、先手を読んで、資金を持った状態で冷静に物事を考えていこうということです。そこをしっかりと 、今回書いた資金繰り表とかキャッシュフロー計算書を使って、やっていただきたいと思います。



CRD:ありがとうございます。Cash is Kingという言葉もあるように、McSSを運営する上でも、キャッシュの大切さをもっとアピールすべきですね。
本日は貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。

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